学生虐待対策頁
--看護教員による看護学生いじめの対策--

 看護専門学校など看護師養成課程に入学しても、看護師資格を有する教員による暴言に学生が苦しんだり、社会通念から考えれば悪質ないじめと判断される行為が学生に対して行われることが少なくないようです。
 
 当然ながら、全ての学校で学生いじめが行われているのでないですし、全ての学生がいじめの対象になるものでもありません。しかし、いじめの対象となった学生には大変辛い状況です。心療内科に通院しながら学業を続けている、あるいは何人かはいじめに耐えきれずに休学、退学していくという惨状を掲示板に記されたりもしています。教員の中にさえ、学生いじめを問題視した結果、同僚の教員からいじめを受けたり、退職に追い込まれたりする例まであります。自殺にまで学生を追い込んだ例について掲示板に書かれていたのを読んだ時には、衝撃を受けました。

 更に事情を複雑にしているのは、学生側が10歳台後半〜20歳前後のことが多い点で、悪質ないじめについてどうしたらよいかその若さ故に一般成人に比して判断しにくいことです。いじめを受けて途方に暮れており、うつ状態になっていれば一般成人でもそうでしょうから、より若年者ではなおさらどうしたらよいか分からないでしょう。ここでは、掲示板投稿から相談を受けて学生や教員の皆様とやりとりをする中で知り得た学校側のやり方とその対策について私なりの考えを記します。

 前置きが長くなりましたが、以下の記述をご参照下さい。

いじめや教育方針が悪質と言えるか、損害賠償を請求できるか、あるいは犯罪として対処できるかの判断基準

・教育上の必要性があるか、社会通念上から教育の範囲内と言えるかどうか。--著しく逸脱していなければ、司法判断の対象とはならないでしょう。

・暴言が繰り返し行われているかどうか。暴言かどうかは発言がされた状況などを考慮し、一般にどう受け取れるか、解釈できるかを考え下さい。「学生の受け取り方にもよる」との学校側の説明はどう考えてもおかしいと言えるものでなければ公の場では戦えません。

・学生の人格を傷害したり、学生がうつ病に罹患する、心療内科通院する必要性が生じることを、"社会通念上から"予想可能であるか

・学内の演習、指導時に患者役を学生にやらせるときには、患者役の学生に十分な説明と同意を得ているか--嫌なら遠慮なく断れる状態が作られているか。全身清拭で裸になる、浣腸を学生同士でやらせる等の場合、羞恥心を学生が持ち少なくとも一部の学生はものすごく嫌だと感じるのは当然で、教育と称して強要するのであれば問題で、犯罪として成立する可能性があります。
 この場合、学生が嫌なことを教員に話していないと、了承したと判断される可能性があります。

★学生からの苦情に対する学校側の言い訳方法
・当然ですが学校側を含めて誰にでも自己防衛、弁護の権利はありますし、学校側も言い訳をします。

・教員の暴言については「同じ発言をしたとしても、学生側の受け取り方による解釈は変わる」「そんなつもりで言ったのではない」「何を学生に言ったか覚えていない」と言い出すものと考えておいて下さい。
・学生が患者役をすることについては、「どこの学校でも行われている」と説明するでしょう。

★学生側にとっての抗議の限界
・講義や実習の評価について不合格にされたとしても、そのことについて評価の妥当性を再考させ、単位を認めさせるというのは司法判断の対象となりません。ただし、弁護士が代理人として介入するなどしてきた場合は、内部事情が表に出てしまうことを恐れて学校が対応を改める可能性はあります。また、退学処分が下されたときには、その処分の妥当性がきちんと審査された結果なのかを裁判で問うことはできます。

・同僚の学生からの証言を得にくいこと。どの学生も教員や学校ににらまれて単位をもらえなくなる、卒業できなくなるといった事態は避けたいところです。いじめについて文書であれ、法廷での証言であれ、できれば証人にはなりたくなく、現在いじめにあっていない学生ならなおさらそうでしょう。

・学生には不条理な学校の規則でも、公序良俗に著しく反していない限りは学校側に裁量権があり学生は従わなければなりません。「この学校が嫌なら、他にも学校は多数あるわけで、他の学校に入学していればよいだけのこと」と判断されます。ですから、学校の裁量権は社会常識を著しく逸脱している、著しく不条理である、公序良俗に反しいるかをよく考えて下さい。

★一介の学生としてできる対策
・いじめを止めさせたい、あるいは泣き寝入りは嫌だというときには、行動を起こすしかありません。教員や学校側に苦情を言っても聞き入れらないときには、弁護士を代理人して学校に改善を申し込む、圧力をかけるという手段もあります。弁護士が出てくれば、学校側がよほど頭の悪い人の集まりでなければ、対応を改めない限りどういう状況が待っているかは想像できるはずです。それでもだめなら、本格的に民事訴訟を起こして損害賠償を請求する方法があります。患者役を強要して恥ずかしい思いをさせられた、社会常識から考えて指導とは言えない暴言を繰り返したなどの場合は医師法違反、強制わいせつ、侮辱罪その他不法行為として刑事のほうで犯罪性を問うこともできるでしょう。

・「言った」、「言わない」の押し問答にならないよう、教員との会話は小型録音機を携帯し、明確な証拠として残します。小型録音機としてはテープ方式以外にもICレコーダーが家電量販店などで入手可能です。多少の費用はかかりますが、一般市民の手に入らないほど高価ではありません。

・小型録音機を使用しづらいなら、逐一教員とのやりとりをメモしておくことです。日付と時間は必ず一緒に記入する必要がありますが、証拠能力を持たせるメモの記録方法については弁護士などに相談して下さい。「録音と異なり、どうにでも記せる」と相手側は反論してくるでしょうが、裁判で証拠として採用するかは裁判所が決めることになるでしょう。
 もしかしたら、メモには居合わせた同級生の署名確認があるとよいかもしれません。 

・録音、メモを守秘義務違反と説明して学生を言いくるめる学校があります。しかし録音やメモは、患者に関する情報が含まれていても、外部にそれを漏らしたりしない限りは守秘義務違反にはならないと考えられます。犯罪として成立するには当該患者が被害届を出す必要がある親告罪ですし、学生は無資格なので法的な守秘義務はないともいうますが、守秘義務については有資格者と同等と考えて保助看法を準用されると仮定しても、患者が怒って訴えたりする内容が含まれているかも考えてみて下さい。学生に法的に問題があると判断されるなら、守秘義務についての教育を怠った学校側の責任も問われます。学校側に言いくるめられないようにして下さい。

・学校側が訴訟を恐れてメモ禁止、録音禁止としても、学生に従う義務があるかは別です。録音はともかく、メモについては私的資料として休憩時、帰宅後に記録をしていたとしても、企業秘密とは異なりますし、そこまで学生の日常生活に介入する権利は学校にはないと判断されるしょう。会話がなされるその場でメモをとらなければよいだけのことです。
 録音については、学校側の裁量権がありますし、指導に従わなかったときには処分を覚悟しなければならないでしょう。しかし盗聴ではありませんし、録音がされていればそれを証拠としては使えるのではないでしょうか。それに録音を禁止しているいうことは、外部の人に聞かれると困る発言をしていると社会は受け取ることでしょう。また、録音については法曹人でも人により見解が異なるかも知れません。詳しくは弁護士に相談してみて下さい。

・退学を考えていることを話すのも学校側には圧力となります。何故なら、単位認定、卒業の可否決定権を学校が振りかざして学生を押さえつけることができなくなりますし、外部にもれるとまずい内部事情、例えば時間割では授業になっているが実際には何もしていないことを公にされる可能性などの恐怖を味わう結果となります。
 特に国公立校に既に複数年在籍している場合、中退は公費の無駄遣いとして学校側として大変まずい状況です。退学届けの理由欄に正直に理由を記して、そのコピーを設立自治体の学校管理部位に送付するのもよいかもしれません。

●自分は何を望んでいるかもよく考えて下さい。
・いじめをやめてさえくれればよいのか→示談や調停という方法があります。
・精神的苦痛に対する賠償をしてもらいたいのか、心療内科や精神科への通院費用を負担してもらいたいのか、カウンセリングを受けた費用を要求したいのか→いじめの明確な証拠が必要です。
・裁判をするなら刑事、民事のどちらにするのか両方なのか、少額裁判制度を利用するか。
・犯罪性が高く、被害届を出したいのか
・簡易裁判所での少額裁判制度でもよいのか--すぐに結審となり判決はでますが、当然短所もあります。

●弁護士でも事例、事項ごとに見解が異なる場合は少なくありません。本気で学校と戦うのであれば、医師のセカンドオピニンのように、複数の弁護士の意見を聞き、法曹人の考え方の傾向も確かめましょう。

注意事項
#裁判を起こすとしても、その限界を理解して下さい。民事訴訟を起こせば希望通りの多額の賠償金を簡単に手に入れられるとは思わないで下さい。何でも原告の主張を簡単に通していたら、被告の権利は守られません。
 日頃、民事訴訟に関する判決のニュースをみていれば、御理解頂けると思います。

#賠償の請求金額は各人の状況を見て考えて下さい。いじめで単に辛かっただけなのか、うつ病にまでなっていていじめとの因果関係が強く疑われるか、休学・退学まで余儀なくされたか、いじめの程度がどのくらいでいつまで続いたのかなどにより異なってくるでしょう。
 他の学校に入り直したいから今までの学費を全額返還してくれと言うのは恐らく無理でしょう。国家試験受験資格が得られなくても一定の知識や技術は身に付くという利益を受けているので、認められても部分返還になると思われます。中退しなくても学校が対応を改めれば同じ学校で学業は継続可能と判断される可能性もあるでしょう。

# 訴訟が唯一の解決手段ではありません。示談や調停という選択肢があります。弁護士が間に入るだけでも、相手が対応を改める可能性はあります。訴訟を起こせるだけの証拠を集めておけば、学校側も考え直すでしょう。時間や費用の負担も小さくなるかもしれません。


 



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