看護教員の学生いじめ

「看護教育の問題点」の頁でも教員による学生いじめについて取り上げていますが,教員からいじめを受けたとの書き込みやメールが続いたことがありました。私の個人的印象ですが、他分野の一般の教育施設に比較して,看護師(看護婦)養成施設では教員の不適切な指導が多いように感じられることから、別項として多少記すことにしました。学生虐待の具体例を紹介すると同時に、「このホームページに書いてあることを学生時代に知っていれば」とのお便りも戴いているので、対策も簡単ながら記しておきます。

 注意書き 

 ここで取り上げるいじめやそれに類する行為が、必ずしも悪意に基づくものばがりではないでしょうし、全ての教育施設や教員がいじめを行っているのではないことは明記しておきます。

 明記しておかないと、「教員全部がいじめを行っている」と誤解をされたり、お叱りの書き込みやメールをもらってしまいますので、ここに記しておきます。一部の困った例について取り上げているとお考え下さい。

 


 いじめや虐待、もしくはそれが疑われる例を、掲示板書き込みやメールの中から具体的に示すと、

・暴言を吐かれ,卒業できなければ告訴するつもりだった。

・「貴方は患者を人間として見ていない」と言われた。提出書類などで、学生である自分の表現方法に問題があったとしても、この言い方はひどい。

・仮に注意の必要があるにしても、個人的に注意すればよいことをわざわざ他の大勢の学生の前で話した。

・進学コースへの推薦を拒んだ--理由は「成績も出席もよいが、人間性の面で問題がある」-この例では自力で進学。

・気に入らない学生については、人格を否定するような発言をしながら、退学に追い込む。

・頭髪の色調、化粧について「茶髪、化粧が濃い」と言いがかりをつけるが、同程度の容姿の他の学生には何も言わない。

・無視する。--児童虐待でいうneglectに該当?

・親しかった親類の葬式への出席を「大切な授業だから」と授業の欠席を認めてもらえなかった。つまり、授業を優先。この例では、葬式に出なかったことを後悔している。--急患のため職場から抜けられない、自宅待機中呼び出されたというのとは事情が異なりますよね。そんなに大切な授業が何かも疑問です。

・看護教員間の意見の不一致や連絡不足、調整不足のしわ寄せとして、学生が非難される。--看護についてはまだ学問体系、教育体系が未熟な面があり、個々の看護師(看護婦)により見解が異なり、許容範囲が狭いと言う背景。

  以上のような書き込みやメールがあったように思いますが,不適切な,学生いじめとも受け取れる指導がされているようです。ただ,本当にいじめかと言うと,その判断は難しい面があるのは認めなければなりません。

というのは,

・どうしても主観的な面がありますし、教員の同じ発言に対しても、学生により受け取り方も異なるでしょう。

・一般社会からみれば社会常識の範囲を逸脱した不適切な発言であっても,それは看護業界の慣習との見方はできますし,現在の教員は学生時代に自分が受けてきた指導を模範にしているだけであり,悪意は無い場合も考えられます。

もっとも,そうだとしても,改善すべきことにかわりはありません。自分の気にいらない学生を本当にいじめているなら,勿論これは問題です。「例え成績は悪くても、自分の意思を持たず、教員のいうことをだまって聞く学生が、良い学生」

との御意見も頂戴しました。

 

 上記以外の学生いじめとしては

・授業では毎回指名して何かを質問して答えさせる。

・試験,実習の際は特に採点を厳しくする。

という方法が考えられます。後者については、筆記試験、書類審査の際、用語の使い方も問題になるので注意しましょう。例え適当な用語を用いていても「授業で教えた用語で書いて下さい」と注意される場合があるようです。これに関しては、「単に医学知識がないだけじゃない」と看護教員に対して反感を持っておられる方もいました。

 児童虐待の犠牲者は、いずれ児童虐待の加害者になる確率が高くなるとの話を聞きますが、教員からいじめを受けた学生がいじめの加害者になることも予想されます。そのような科学的根拠は持ち合わせていませんが、もしそうなら、ゆゆしき事態です。


いじめを受けた時の対策

(注)私見で必ず有効であるとは保証できません。

 本当に学生いじめかどうかは問わず,いじめと思える行為について,考えると,ひたすら耐えて,教員の御機嫌を伺いながら卒業に辿り着くという方法が取れない場合,学生としてできる対策には次のようなものがあるのではないでしょうか。これらが吉とでるか凶とでるか(教員を怒らせるだけ)かは分かりませんが,凶と出た場合は,公序良俗に反した発言や行為を学生側がしていなければ,弁護士に相談しましょう。弁護士の相談料は5000円-10000円/30分と言われていますし,電話帳のタウンページにも広告が載っています。どうしようもなくなる前に、弁護士を賢く利用しましょう。

・可能なら,一人で教員に立ち向かわずに,同志を探します。一人だけで立ち向かっても,謀反者として退学処分になる危険があります。教員に嫌われていて何かと言いがかりをつけられている場合には,それを証言してくれる友人を探しておきます。

 「退学処分になったら、学校側を訴えられるか」との御相談のメールが届いたことがあります。科目の成績評価などとは異なり、学生に対する最も過酷な処分である強制退学については、その判断が下されるに当たり適当な審議がされたかを裁判で問うことはできるとの話を聞いています。どうしても納得できなければ、裁判という手もあります。勝訴は難しいかもしれませんが、自分の主張を公の場で話すことはできます。

・上記の寄せられた例にも紹介しましたが、「患者を人間として見ていない」と実習で言われた場合,具体的に何処がそうなのか問い詰め,学生側の意見も教員に話す努力をします。定められた実習期間を最後までやり遂げた後に言われたのなら、そして、実習の単位認定を拒んでくるようなら、

「そんな学生に患者の看護をさせ続けた」ことに問題はないか、

「実習期間中にしっかりと学生に注意をしたか」、

「注意をしても改善されなかった」というなら、「患者の利益を考えて適切な対処を取ったのか」

を問い詰めるというのはどうでしょう。学生に問題があるのに適切な処置を取らなかったと言うなら、教員の責任を問えます。逆にそこまで学生に問題がないのならば、単位を認定しないというのには無理があると思われます。つまり、どちらにしても教員には不利な結果になります。

どうしても単位が貰えず,落第になるのなら,教員の責任を教育施設長や教育施設の設立母体に訴えたりしましょう。当該学生単独では相手にしてもらえない場合は、他の学生の署名を集める、弁護士を代理人にしてみるというのは如何でしょうか。これが有効で実現可能かは分かりませんが、何もしなかったら落第、中退です。

・個人的に注意すればすむことを皆の前で言われた場合,同様の行為を他にしている人がいて指導として学生全員に注意が必要な場合は別として,名誉毀損となっていないか考えます。

・学校側が,自分達の指導のまずさ,内部事情を世間に漏らされたくないのではと感じている場合もあるでしょうから,退学を選択肢として考えていることを話すのもよいかもしれません--学生が退学を考えている場合、単位認定の権限を学校側は脅しとして使えません。また,公立に在学しすでに在学期間が長い場合,中退されると学校側としてはまずいという理由もあるようです。

 親類の葬式への出席については、自分に直接関わる教員にいってダメなら、学年主任、校長などより上の役職の人に訴えてみましょう。できれば、看護師(看護婦)ではない人を選んで訴えましょう。この際、一方的に何日間ものお休みを要求してはいけません。遠隔地の場合には、欠席日数をできる限り短くする努力、とんぼ返りの予定をしているところを見せると言うか、若干の妥協をしてみせるとよいかもしれません。

いじめが原因で所謂ノイローゼ、自律神経失調症や不眠、うつなどに悩んでいる場合は、医療機関を受診しておくと、訴訟を起こす時には、いじめによる弊害の証拠になるかもしれません--悪質ないじめがあり、それによる障害の可能性が高い場合の話ですが。

訴訟を考える目安、訴訟を行うときの留意事項

客観的に見て教育や指導の範囲を著しく逸脱している。自分一人がいじめと思っても、他人からみれば指導の範囲内の場合は、当然告訴の適応ではありません。

学生個人を著しく侮辱するような発言を繰り返す。個人の名誉を傷つけるような発言を他の学生の前で行う。1時間など長時間にわたりねちねちと学生に暴言を浴びせかける--勿論、教育上の必要性がある時に適切な表現、適切な時間でなされている場合は除きます。

嫌がらせが繰り返される。-- 一度や二度嫌がらせがあっただけではよほどでなければ訴訟の適応とはなりません。繰り返しの嫌がらせにより精神的苦痛が大きいことが必要です。一度だけの嫌がらせでは、それにより損害が大きい場合に限ります。損害の程度としては例えば、いわゆるノイローゼ状態になる、不眠で医療機関を受診し投薬を受ける、うつ病になるといったような場合で、因果関係が十分に考えられなければならないでしょう。損害を受けているとの証明も必要となります(他項参照)。

指導の名目で極端な嫌がらせをした場合。婦人科用内診台に乗せられ、他の学生に対し、内診台に乗っている学生のジャージを脱がすように指示した教員の例が掲示板に投稿されたことがありましたが、このような例は犯罪として被害届けを出せる可能性があります。実際にはいじめが失敗した場合も、「未遂」ということで犯罪になるかもしれません。浣腸など学生同士でやらせる場合も、「遠慮なく学生が嫌なら断れる」状況が作られていない場合には、不法行為として犯罪になる可能性があります。

訴訟には証拠が必要です。弁護士や警察に相談するにしても、明確な証拠や証言があると相談先に現状を納得してもらいやすいし、助言もしやすいはずです。
 訴訟を考えるときは、小型テープレコーダ、ICレコーダーなどでやりとりを記録しておくのが望ましいでしょう。これらは家電量販店や通信販売で容易に入手できます。
少なくとも、日時ややりとりの内容を事細かくメモしておきます。メモの場合は日付と時間の他、自分と他の学生の確認署名などがあるとよいかもしれません。細かい方法は弁護士とご相談下さい。
 せっかく録音しても、学校側が不利な証拠を隠滅しようと言いくるめて証拠を奪おうとするかもしれませんが、大元の録音を渡す前には弁護士などに相談して下さい。

・明らかに学生をおとしいれる目的で悪意があると考えられる発言やいじめであって犯罪性がある場合には民事訴訟以外にも刑事事件として扱えるかもしれません。掲示板投稿を読んでいると学校によっては立派な脅迫、侮辱行為と思える場合があったのでそのような場合、証拠、証言を確保して警察に相談してみて下さい。

・費用については、弁護士の相談だけなら大してかかりません。心配なら、法律事務所(弁護士事務所)に電話で聞いてみるなりして下さい。本格的な裁判の場合には弁護士を雇ったりして大変ですが、簡易裁判所での少額裁判なら判決もすぐ出ますし、費用もかからず、簡単です。複数の学生が別個に少額訴訟を起こすという方法も考えられます。

裁判に持ち込めば簡単に皆様の主張が認められ、高額の賠償金を支払ってもらえるわけではありません。看護学校のいじめに限らず、他の民事訴訟の判決ニュースを参照してみて下さい。皆様の主観と客観的判断は必ずしも同じではありません。裁判官の間、弁護士の間でも賠償に適当と考える額は異なります。一般的に考えていじめの結果として予見し得る損害かが争点にもなるでしょうから、例えば感受性が異常に高い人が軽度のいじめでうつ病になっても精神的苦痛に対して高額の賠償金を請求しても認められない可能性が高いように思えます。いじめで退学に追い込まれても学費の全額返還は難しいと考えられます。なぜなら、資格取得には至らなくても一定の知識や技術を学習できたのですから、学費返還を請求しても一部しか期待できないと想像されます。

・裁判という方法だけでなく、示談や調停という方法もあります。弁護士に間に入ってもらうだけでも相手には圧力なり、対応を改めてもらえる可能性があります。その場合も、相手に言い逃れができないように証拠や証言は集めておくのがよいでしょう。

 


「皆が言っている」

学校側に不満を言う場合、この表現を使うと、「他の人はともかく、貴方はどうなのですか」と返答されることが予想されますので、そう言われる前に、「勿論、私もそう思う」とこちら側から言ってしまいましょう。あるいは、「一般的に『皆が言っている』という場合には、自分も同意見である」のではないかと話すようにしましょう。

 


看護教員のいじめではありませんが

 インターネット上で看護の現状を指摘する活動をしていると、看護関係者から反論も頂戴しますし、それ自体は予想通りなのですが、いじめと受け取りたくなるものもあります。被害妄想と言われそうですが、私に嫌悪感を持っていると思われる人から、嫌がらせとしか思えない書き込みをされたり、どう自分の発言内容を説明しても、無理に悪く解釈して、けんかを売るような書き込みをしてくる人がいます。

 反論するならするで、もう少し上手にしたらと思ってしまいます。「あんな文章書いて、結局私COXの意見を支持する結果になっているのに気付かないのかな」と思うことがあります。「ねちねち理屈っぽい文章、貴方なんか大嫌い」との感想を掲示板に書いて行った人もいましたが、理屈を書かないで納得してもらおうというのも無理ですよね。

 

 

 


いじめの予防方法

(注)私見で必ず有効であるとは保証できません。

現実的な対応を考えますと・・・・ 

とにかく目立たないことですが、具体的に述べると

(1)よい成績は取らない。トップクラスの成績を取ると目立つので、教員の気に入らないことをしてしまった場合にそれが目立ち、風当たりが強くなる可能性があります。特に、医学の試験は山をはりやすく、勉強次第で試験の成績はよくなりますが、看護に比してよい成績をとってばかりいると、いじめの対象になりかねません。看護師(看護婦)は医師、医学に嫌悪感を持っている面があるので、医学と看護の成績の均衡も考えましょう。

(2)教員のいうことに疑問を持っても、個人で立ち向かうのは止めましょう。多数の賛同者が得られない場合は、「はい、はい」と表面上は教員に従っておきましょう。例えどんなに教員のいうことが不条理に思える場合があっても(このような例はまれかもしれませんが--書いておかないと苦情が来るので)、慎重な対応が必要です。

(3)教員間で指導内容に差異がある場合でも、「あの先生からは、こう教わった」「教える内容を統一してほしい」と言ってはいけません。医学の場合は一般論、教科書的知識があり、そこからずれていても、ある程度の許容範囲というものがありますが、看護師(看護婦)の世界では、許容範囲が狭くなっています。

(4)授業等で積極的に質問するようなことは避ける。質問を「積極的な学習態度」と受け取ってくれる先生ばかりではないようです。ただし、医師による医学の講義の場合では心配いりませんので、積極的に勉学に励みましょう。

(5)看護の授業や実習でレポート提出の際は、参考文献になるべく看護師(看護婦)向けの文献を書くようにします。洋書や医学書を少なくしないと、「ここは医学部ではなく、看護学科、看護専門学校」と教員は感じるかもしれません。

(6)英語の表現しかなく定訳がない病名、用語を用いる時は、それを教員の神経を刺激しないよう伝えます。そうしないと「日本語で書け」と無理を言われ、教員の心象を悪くしかねません。ホルモン名、人名についてもできるだけカタカナ表記が無難です。医師の講義では、英語で書いて何ら問題ありません。

(7)実習の際は、一人だけ要領よく終わらせてはいけません。病棟実習では自分だけ定められた実習時間で終わるようスケジュールを上手く組んでも、他の人が手間取り、指定の時間に患者のケアを終わらせることができない場合は、自分もそうしましょう。実習をサボっていると言われかねません。

(8)教員の質問に対し、他の人が答えられない時には、自分も「わかりません」と答えます。分かっていても、答えてはいけません。こいつだけ分かるとは生意気、そんな風に受け取られないとは限りません。

 


 

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